大統領令のベースを書いたとされるバノン氏 AFP=時事


 クシュナー氏とバノン氏の確執が起きた場合、どちらが勝つかと言えば、クシュナー氏に決まっている。なぜなら、クシュナー氏は娘婿であるというだけでなく、彼の父親も不動産業者で、トランプ氏のビジネスと密接に関わっていたからだ。つまり、インナーサークルの中でもとりわけ深い絆でつながっているのだ。

 あるいは、新設された国家通商会議(NTC)の委員長に就任したピーター・ナバロ氏(カリフォルニア大学アーバイン校教授)は、『中国による死(Death by China)』や、『米中もし戦わば(Crouching Tiger)』といった著作がある対中強硬論者で、米中関係の悪化が懸念されている。

 しかもナバロ氏は、「ドイツの国際競争力が強くなったのは弱小国が多いユーロ圏にいるおかげであり、マルクのままだったらこれほど強くなっていない。一種の為替操作だからドイツはユーロを離脱してマルクに戻れ」とも主張している。これはEUとしては看過できない発言である。

 その一方でトランプ政権には、石油メジャー最大手エクソンモービルのCEO(最高経営責任者)だったレックス・ティラーソン国務長官や、商務長官に指名された投資家ウィルバー・ロス氏、ボストン・コンサルティング・グループ出身のウィリアム・ハガティ駐日大使のように、グローバルビジネスの現場を知り尽くした人物もいる。

 そうした矛盾がこれから噴き出して側近や閣僚の間で内輪もめが始まり、トランプ大統領は自分がホストを務めていたテレビ番組の名ゼリフと同様に「お前はクビだ!(You’re Fired!)」を連発するか、マイケル・フリン前大統領補佐官のように側近や閣僚たちが次々と辞任して、遠からず政権が内部崩壊すると思うのだ。

 トランプ大統領自身は不動産業者で経済や経営のことはほとんどわかっていないし、この30年間で進んだ企業のグローバル化の実態を全く知らない。為替に関しても側近の助言の受け売りの域を出ていない。安倍首相との1対1の会談で経済問題が出なかったのは、出して議論するだけの理解力がなかったからだ、と私は見ている。

 アメリカ国民は、そういう人物を大統領に選んでしまった過ちに次第に気がつき、支持率は急落するだろう。そして抗議デモ、マスコミの攻撃、ネットでの炎上などが抑えきれないほど拡大し、トランプ大統領が自ら政権を投げ出す可能性が高いと思う。

 安倍首相は性急に「経済対話」で二国間協議を進めても、得なことは何もない。トランプ政権の内情をきちんと分析し、じっくり腰を据えて“ポスト・トランプ”に備えるべきである。

※SAPIO2017年4月号

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン