「若手も育てないといけないが、戦力的に考えるとどうしてもベテランの力が必要となってくる。ただ言葉は悪いが、こちらはベテランに構っている暇はない。言わなくてもやる選手ばかりだから開幕に間に合ってくれればいい。糸井には打つ方も、走る方も、守る方も全部やってもらいたい。正直な話、彼の打順は迷っています」
チーム作りはまだまだこれから──金本監督は繰り返す。指導者として目指す監督像があるのかを聞くと、「これまで仕えた監督のいいとこ取りをしたい」と、具体的な名前は出なかった。
「名監督とは勝つ監督のこと。そのためには勝てる戦力が必要。今の阪神は過渡期にあり、入れ替わりの時期です。補強、補強で強くするのが手っ取り早いが、そればかりすると本来の目的を見失うことになり、育成をやめたのかといわれますからね。プロの世界だから育成しながら要所は補強する。そのバランスが重要だと思っています」
阪神の今年のスローガンは「挑む」。常に相手に立ち向かってチャレンジするという意味が込められている。
「もちろん(昨年のスローガンの)超変革を卒業というつもりはまったくない。ウチはBクラスで、弱いですから」
鉄人監督の2年目が始まる。
●かねもと・ともあき/1968年生まれ。広島県出身。1992年広島入団。走攻守三拍子揃った選手として、2000年には史上7人目のトリプルスリーを達成。2003年にFAで阪神に移籍。18年ぶりのリーグ優勝に貢献し、2008年には2000本安打を達成した。左膝半月板損傷や右肩棘上筋部分断裂などの大怪我を負いながらも試合出場を続け、連続イニング(1万3686イニング)・連続試合フルイニング出場数(1492試合)の世界記録を達成。その後も連続試合出場記録は1766試合まで続いた。2012年に現役を引退。野球評論家を経て、2016年、阪神タイガースの監督に就任した。
◆撮影/藤岡雅樹 ◆取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2017年4月7日号