寄席の原体験は、高校2年生の春。ラグビー部を辞めて、暇を持て余していたとき、たまたま目に入った浅草演芸ホールで寄席を見た。
「お客さんは、おじいちゃんおばあちゃんばかりでした。出てくる人も、さほど一生懸命さが感じられないというか(笑い)。スッと落語やって、終わったら頭下げてスッと袖に帰っちゃう。子供ながらにおもしろいなというか、格好いいなと思ったんです」(一之輔)
それから寄席に通うようになり、日本大学芸術学部を卒業後、春風亭一朝の弟子になり、落語家になった。現在、独演会のチケットは即完売。そんな人気者になった今でも、寄席を大事にしていきたいと話す。
「寄席は、なんでもありの空間なんです。おもしろいおじいさんもいれば、おもしろい若手もいる。つまらないおじいさんもいれば、ただ大声を出してる若手もいる。ご飯を食べられるし、お酒を飲めるところもある。寝てもいいしね。
なんか毎日の生活にくたびれたり、何も考えずに笑いたかったり、のんびりしたかったり、そういう時に寄席に来てください。寄席は足湯のようなものです。温泉じゃない。温泉は、行くのにちょっと覚悟がいるでしょ。お金もかかる。足湯なら、靴下脱いでポチャンと入れる。落語は、日本語がわかればわかります。下調べなんか必要ありませんし、むしろない方がいい。ゆるくてほわっとした空間、それが寄席です」(一之輔)
※女性セブン2017年4月27日号