●その3 朝ドラの使命=地域性に根ざす
NHKが公共放送である以上、それぞれの地域を平等に扱い、土地の個性を大切にしなければならない。しかし前作は舞台となった神戸がどんな場所なのか、どんな個性をもった土地なのか、結局よくわからずじまいでした。
一方、今回は「奥茨城」がどの位置にあって、人々はどんなイントネーションでしゃべっていたのか。山間の農家ではどんな生活をしていたのか。経済、労働、近隣関係といった要素を具体的に活き活きと描き出そうとしています。地域性にこだわっているあたりも高く評価したい。
舞台設定に配役、脚本、演出と『ひよっこ』の滑り出しは上々。まずは、「朝ドラの王道」と言っていいのではないでしょうか。家族の輪がしっかりと描かれているからこそ、「父の失踪」という破綻、それによる不安と喪失が陰影をともなって立ち上がり、ドラマに緊張が生み出されていく。
とはいえ前作も「冒頭はよかったのに」という声が聞かれました。そんなことにならないよう、半年間頑張って走っていってほしい。
『ひよっこ』を見終えると、ニュースでは「決算延期を繰り返さざるをえない東芝」「上場廃止の危機」についてのアナウンスが。「光る、光る東芝、走る、走る東芝」というあのCMソングが鳴り響いていた輝かしき時代の象徴が消えていく。昭和の終焉について、リアルに考えさせられてしまいます。
そう、「懐かしさ」と「喪失感」というテーマは、今こそドラマが描き出すべき対象なのだとガテンしました。