国内

「死後離婚」女性に多いのは根強い日本の家制度の影響か

「死後離婚」が注目されているのはなぜ?

 死後離婚──離婚といっても、生前離婚とはまったく別もの。配偶者の死後、『姻族関係終了届』を提出し、配偶者の血族(姻族)との関係を終わりにすることを指す。

 だが、そもそも配偶者と死別した時点で、婚姻関係は終了しているので、わざわざ離婚する必要はなく、死後離婚届というものが、存在しているわけでもない。

 また配偶者の血族とは、配偶者の両親、祖父母、曽祖父母、兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪までの3親等の血族をいい、かなり幅が広いと、丸の内ソレイユ法律事務所・代表弁護士の中里妃沙子さんは言う。

「民法上では、親子の扶養義務を定めていますが、これはあくまで道徳上の問題。嫁が義理の両親の面倒を見なくてもペナルティーはありません。しかし、もともとの関係が悪く、いつか縁を切りたいと思っていた人にとっては、これが唯一の救済策になります」(中里さん)

『姻族関係終了届』の提出に義親の合意は必要ない。自分の意思のみで提出できるので、嫌いな親類と縁が切れる、と注目を浴びている。

 さらに、戸籍上は、亡くなった配偶者との婚姻関係はそのまま残るので、届け出後も遺産や遺族年金は受け取れる。

 テレビなどで取り上げられた影響からか、『姻族関係終了届』の提出数は、平成23年度から急増している。行政書士の中村麻美さんによると、相談者はほぼ女性だという。

「しかも、50~70才代が圧倒的に多い。長寿社会では、この年齢で夫と死別しても、義理の父母やきょうだいは健在で、何らかの世話が必要なことが多い。これも、多くの女性が姻族関係を終了させようとする理由の1つでしょう」

 死後離婚の経験者でもある、夫婦問題カウンセラーの高原彩規子さんは、女性に多い理由を、日本に根強く残る家制度と関係がある、と分析する。

「嫁は介護要員としてカウントされることが多く、たとえ息子の死後でも、嫁が老後の面倒を見るべきと考えている義父母も少なくありません。夫の生前に嫁姑関係が良好でなければ、いくら介護を求められても、嫁がやりたくないという気持ちになるのもわかります」(高原さん)

 夫の生前はなんとか我慢できていたことが、死後に行われる葬祭関連の行事や、相続を含む公的な手続きを進める中で、もめごとが積み重なっていくと、遂に耐えられなくなり、死後離婚を決断する人も多いそう。

※女性セブン2017年5月4日号

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト