数十kgの金属塊でも宇宙から音速の何倍もの落下速度で軍艦に激突すれば艦底まで穴が開き、艦内火災が発生する。大型艦も機能は止まる。空母『遼寧』の幅は75m、長さは約305mある。新造空母はもっと大きい。したがって、座標が既知である港湾の岸壁には、有事に中共空母は近寄れない。海面の一点に漂泊することもできない。偵察衛星に座標が知られるからだ。わが「SS-520」で串刺しにされたくなければ、常に海上を逃げ回るか、そもそも侵略をしないか、二つに一つとなるのである。
言うまでもないがこれは停止・碇泊中の巨艦だけを狙える対艦兵器である。弾頭重量の微小さから、大量破壊兵器へのコンバートは考えられない。中共は2005年から、2000km先で30ノットで運動している米空母を撃沈する「対艦弾道弾・東風21D」を持っているぞと宣伝している(ただし海に向けた試射を過去一度も実施していない)が、もともと「東風21」は核弾頭が搭載可能で、通常弾頭でも都市を爆砕できる大量破壊兵器だ。
そんな攻撃的な弾道弾で周辺国を脅かし放題の中共に、従来米国は同類のミサイルでもって対抗することができなかった。というのは1987年の「欧州中距離ミサイル全廃条約」に米国は縛られているためで、「パーシングII」のような、射程が500kmから5500kmの間にある弾道弾は、米国は今も製造・配備はできない。かかる米国の国際法上のハンデをわが国が代わって穴埋めしようとはしてこなかった怠惰が、西太平洋域での中共の増長を誘ってしまったともいえよう。