対艦弾道弾を禁止する国際法は存在しない。また米露合意の当事国でないわが国は、中共と同様に、国防上必要ならば「パーシングII」と同じものすら装備できる。しかし他方で無差別大量破壊兵器の拡散に反対する立場の日本国には、対軍艦の戦術機能しか発揮し得ない最小ペイロード(弾頭重量)の非爆発性精密誘導兵器を実現して、道義的・技術的な手本を世界に示す責務も課せられているだろう。
海自の多数の護衛艦から各1発、「SS-520」を改造した射程1800kmの純然たる合法的対艦弾道弾を発射できるようにしておけば、中共の空母は有事には被弾を避けるために随伴艦ともどもひたすら洋上を走り廻るほかなく、燃料を急速に消尽する。
もし交戦相手から普通の対艦ミサイル等で損傷させられても、修船ドックはことごとく座標が既知なので、逃げ込める場所は西太平洋のどこにもない。島嶼侵略計画は、もう最初から諦めるしかないであろう。アセアン諸国ももはや中共海軍の恫喝には怯まなくなり、周辺海域の「航行の自由」が保たれるであろう。
●ひょうどう・にそはち/1960年長野市生まれの軍学者。近書に『日本の武器で滅びる中華人民共和国』(講談社+α新書)、『日本の兵器が世界を救う』(徳間書店)など。
※SAPIO2017年5月号