さらに彼が重宝されるのは、前職で培った独自のネットワークによる、海外番組の買い付け販売だ。デーブは、世界から届く衝撃映像の提供を、国内でいち早くビジネスとして確立。社長を務める「スペクター・コミュニケーションズ」は国内のほか、映画やテレビ業界のオフィスが集中しているロサンゼルスのセンチュリーシティにも事務所を構え、グローバルに展開している。
そうした功績やスキルについて、あまり語らないのも彼の人柄だ。あるラジオにゲストで呼ばれたとき、北朝鮮情勢について饒舌に語る彼に対し司会者が「詳しいですね」と聞くと、「いや、さっき池上彰に聞いたから」と、自分をよく見せようとはしない。また、「肩書きは何?」と質問されると、「コメンテーター。いや、謝ってばかりいるから“ゴメンテーター”かな」と、こちらも笑いですり抜けていた。
冒頭で挙げたような政治のダジャレも、ともすれば「偏っている」と言われがちな批判を笑いで包んで見せていることも特徴的だ。
かつてファッション評論家のピーコは、彼のことを「本音をくだらないダジャレで隠している、恐ろしい存在」と評したという。
だが、それは彼が「ブラックジョーク」の国、アメリカで育ったことにも起因している。本音をそのまま相手にぶつけるのではなく、「直球」をオブラートにくるんで、やんわりと刺すことができるのだ。
声高に主張しすぎず、アメリカンジョークを土台とした、日本語を巧みに使ったダジャレ。前職を生かした独自のネットワークによる番組買い付け販売。メディアの間を、さらりと、そしてしたたかに泳ぐデーブ・スペクターの今後に期待したい。(芸能ライター・飯山みつる)