森友学園では、幼稚園の子どもたちに教育勅語を朗誦させるエキセントリックな教育方針でも、注目された。教育勅語とは、緊急事態の場合、皇国のために奉仕するというものだった。それを子どもたちに唱和させている大人の意図とは何だろうか。
安倍内閣が、教育勅語について、憲法や教育基本法に反しない形で教材として使用を認める閣議決定をした。閣僚が、教育勅語を肯定しはじめるこの動きは、いったい何なのだろうか。
この国の「空気」は、おかしな方向に行こうとしている。一強になった首相の思いを、みんなが読み合っている。自分がいい思いをするために、より激しく右へ動く競争をはじめたように思えてならない。志の高いホンモノの保守に、ニセモノの保守を駆逐してもらいたいものだ。
この流れを止めるために、ダメなものはダメと言える勇気が、与党のなかにもっとあっていいはず。
ぼくたち国民も、マスコミも、顰蹙を買ってでも、自由に発言することを忘れてはならない。少なくとも、明るみに出た問題は、忖度せず、きちんと事実を解明してもらいたいものだ。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『遊行を生きる』『検査なんか嫌いだ』。
※週刊ポスト2017年5月5・12日号