日本の高速道路は世界最高の通行料金(写真は九州自動車道)
それはそうだろう。120kmで巡航中、目の前にいきなり80kmのクルマが割り込んできたら急ブレーキは必至である。後ろのクルマが車間を詰めてきていたら、そのクルマも急ブレーキ。そういうパターンは渋滞の原因にもなるし、事故だって起きかねない。
だが、その速度差は海外でも同じことである。130km区間でも制限速度よりはるかに低い100km、80kmで走っているクルマは結構いる。それでもヨーロッパをドライブしていて大して身の危険を感じない理由は、後方から速い車が来たときにさっと進路を譲るという習慣が徹底されていることにある。
これにはちゃんとした法的根拠がある。後方から速い車両が来たのに車線を占有し続けることは、進路妨害として交通違反になるのである。一方、遅いクルマがいるからといって、右側追い越し(日本においては左側追い越し)をかけるのも違反。
違反の度合いは後者のほうがはるかに大きいとされてはいるが、相手が道を譲ることを半ば確信しているためか、そういう“暴走”はほとんど見かけない。速度差による競合が起こりにくい道路交通法体系になっているのだ。
また、貨物車が第1走行車線に張り付いているのも日本と違うところ。これは日本と違ってトラックドライバーの8時間勤務が厳格に守られ、超過勤務が発生すると会社のほうに罰則が適用されることによるもの。ノルマがないため、先を急ぐ必要がないのだ。
ヨーロッパでは今や、国境をいくつも超える貨物輸送も普通のことになっている。ハンガリーとオーストリアの国境付近で、農産品を山積みしたルーマニアナンバーのトラックが列を成しているのも普通のことである。
交通が集中する国境地帯では、トラックによる渋滞が発生することもある。が、そんなときでもトラックは2列になって走ることがなく、一番右の車線に並んでいる。速いレーンへのトラックの飛び出しをなくすることは、制限速度の高い高速道路の安全を確保するための、マストの要件と言えるだろう。
日本の高速道路の制限速度引き上げにともなって、こうした安全に関するコンセプトを変えていくのはきわめて難しい。遅いクルマはすみやかに後続車に道を譲るよう教育するといったことは実行可能だが、問題は貨物車である。