芸能

吉行和子 60年前の初舞台『アンネの日記』で発揮した意地

「女優になる気はなかった」という吉行和子

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、5月公開の映画『家族はつらいよ2』で熟年離婚の危機を乗り越えた夫婦の妻を演じる吉行和子が、60年前に踏んだ初舞台について語った言葉を紹介する。

 * * *
 吉行和子は劇団民藝に所属、当初は女優になる気はなかった。

「子供の時から体が弱くて、友達もいなくて、学校にもあまり行けないから、いつも本ばかり読んでいました。本の中で登場人物はこういうことを喋っているけど、こういうことも言うんじゃないかと頭の中で考えるのが私の遊びでした。

 そんな中学三年の時に劇団民藝の舞台を観たんです。難しい芝居でしたが、『本をめくるみたいに話が進みながら、自分が一人でやっていたことを、本当の人間がやっている』という世界に出会えました。それで、『私はこの劇団に入る』と思いました。

 その時は女優になるなんて、思ってもいませんでした。体も弱いし、教室で喋れないくらいの引っ込み思案でしたから。

 何か仕事があるんじゃないかと思って観ていると、次の幕で衣装が変わったり、カーテンが変わったりするのに気づいて、あれならできるのでは、というのが最初のきっかけなんです。

 劇団には偶然入れまして、裏方でやっていきたいと言ったのですが、『芝居とはどういうものかをみんなと勉強しなさい』ということで民藝の俳優研究所に通うことになりました。勉強会ではセリフを言う機会もありましたが、特別に上手いどころか凄く下手で。それでも、勉強のために一応やっていたの」

 女優として初めて舞台に立ったのは一九五七年の舞台『アンネの日記』の主人公役だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中村芝翫の実家で、「別れた」はずのAさんの「誕生日会」が今年も開催された
「夜更けまで嬌声が…」中村芝翫、「別れた」愛人Aさんと“実家で誕生日パーティー”を開催…三田寛子をハラハラさせる「またくっついた疑惑」の実情
NEWSポストセブン
ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
安倍昭恵夫人に「出馬待望論」が浮上するワケ 背景にある地元・山口と国政での「旧安倍派」の苦境
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《秘話》遠野なぎこさんの自宅に届いていた「たくさんのファンレター」元所属事務所の関係者はその光景に胸を痛め…45年の生涯を貫いた“信念”
週刊ポスト
政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相(時事通信フォト)
《進次郎氏のほうが不評だった》江藤前農水相の地元で自民大敗の“本当の元凶”「小泉進次郎さんに比べたら、江藤さんの『コメ買ったことない』失言なんてかわいいもん」
週刊ポスト
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
水原一平の賭博スキャンダルを描くドラマが「実現間近」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」、注目される「日本での公開可能性」
週刊ポスト
川崎、阿部、浅井、小林
女子ゴルフ「トリプルボギー不倫」に重大新局面 浅井咲希がレギュラーツアーに今季初出場で懸念される“ニアミス” 前年優勝者・川崎春花の出場判断にも注目集まる
NEWSポストセブン
6年ぶりに須崎御用邸を訪問された天皇ご一家(2025年8月、静岡県・下田市。撮影/JMPA)
天皇皇后両陛下と愛子さま、爽やかコーデの23年 6年ぶりの須崎御用邸はブルー&ホワイトの装い ご静養先の駅でのお姿から愛子さまのご成長をたどる 
女性セブン
「最高の総理」ランキング1位に選ばれた吉田茂氏(時事通信フォト)
《戦後80年》政治家・官僚・評論家が選ぶ「最高の総理」「最低の総理」ランキング 圧倒的に評価が高かったのは吉田茂氏、2位は田中角栄氏
週刊ポスト
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン