■ひたすらときめきを追い続ける“ロマンス依存”に注意
その他マッチングアプリには、「仕事命で友人を失い、飲み友を募るOL」「年収600万以上の男性を探し続けるアラサー」「日本語の話相手兼恋人を探している留学生」など、実に様々な目的の人がいる。気軽に人と話したい、出会いたい向きには便利だが、大月短期大学で教鞭をとる社会心理学者の川島洋氏は、こう警鐘を鳴らす。
「各々の目的遂行のために利用する分には、特別問題とは感じません。ただし、こういう動機の中に、一部問題に発展する人がいるので注意が必要です。恋愛自体に依存してしまう “恋愛依存症”という問題も起こる可能性もあります。中でも、ときめく恋愛をひたすら求める“ロマンス依存”が考えられます。通常リアルな恋愛では、ときめきを感じ続けるのは非常に難しいですが、マッチングアプリなら、メッセージを通して同時に複数のときめきを得られてしまう。快感を得られるようになっても自制が効くうちはいいのですが、最悪の場合は日常生活に支障をきたしかねません」
仮に恋愛依存症の問題が起こっていたとしても、アプリの特性から顕在化されにくい危険をはらんでいるという。
「買い物依存症や薬物依存症はお金の痛手があるものの、マッチングアプリの場合、女性は基本的に無料で利用できるので、自制が効きにくくなります。借金といった目に見える形で問題が浮かび上がらないので、表に出にくいんです」
確かに自身の経験を振り返っても、リアルで恋愛を求めているつもりが、いつの間にかゲーム感覚に陥り、“こう会話すれば、こう反応してくるだろう”という攻略行為に夢中になり、アプリ内でのやりとりで完結した、いわば“疑似恋愛”で充足を覚えることはあった。ときめきたい、褒められたい、存在を認められたい――。女性にとってマッチングアプリは、ツイッターとフェイスブックといったSNSの延長線上に位置づけられるのかもしれない。反面、依存という副産物を念頭に置いた上で健全な利用が望ましいといえそうだ。