その波瑠を上回る?注目を集めているのが、夫を演じる東出昌大。妻のうわごとから不倫に気付き、スマホを盗み見する夫の狂気ぶりがヤバイ。まばたき一つしない瞼、ギロリとした2つの眼球は、狂気と嫉妬の結晶。
妻の周辺を調べ上げていく、ねっとりとした暗い情熱。「冬彦さんの再来」と視聴者の間でもざわめきが起こっています。
そう、思い返せば『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)で佐野史郎がマザコン夫を気味悪く熱演し“冬彦さん現象”を巻き起こしたのは1992年。何と、25年も前。それがいまだ風化せず、「冬彦さん」と語られ続けていること自体に驚く。敬服すべきは佐野史郎の破壊的演技パワー。
となると、ますます注目の東出さん。「冬彦の再来」と言われていますが、その枠の中に留まって終わるのか。いや、それとも20年、30年経った時、「あの涼太現象を巻き起こした……」と語り草になり伝説化するのか。そこがポイント。
「善人」「優しい夫」というイメージの東出さんですが、どこまで「暴力的」で「キケンな」魅力を見せつけるのか、これからが勝負です。
波瑠と東出昌大。「あっけらかん」と「ねちねち」。ともに自分の殻を脱ぎ捨てようと挑戦に挑む、クズ人間ドラマ『あなそれ』。役者の存在をかけたストラッグル・格闘を見ることができる点こそ、ドラマ視聴の醍醐味です。