慶応大学法学部教授の片山杜秀氏


片山:すると現在の不安定な国際情勢に既視感をお持ちではないですか?

佐藤:ソ連崩壊の1年目に2500%のインフレが起きて、国有だった資本のぶんどり合戦が始まった。結果、極端な格差社会が生まれて、殺しが続いていく。私の新自由主義嫌いは理屈ではなくて、モスクワで見た現実が根っこにあります。

 なかでも忘れられないのは、内乱寸前にまで陥った1993年のモスクワ騒擾事件(注)。日本大使館前で起きた銃撃戦をCNNが同時中継していた。私たちはその映像を大使館のテレビで、リアルタイムで見ていました。

【注/エリツィン大統領と議会勢力間の抗争。テレビ局を占拠した議会側武装集団に対し、大統領は軍を動員し事態を収束】

 すると大砲を撃つ映像が流れるたびに大使館が揺れるんです。そんな混乱した状況でロシア人が「佐藤も気をつけろ。気が短いヤツは命も短い」「口の軽いヤツは命も軽い」と脅すんですよ。実際、蜂の巣になった知り合いもいました。

片山:まるで昭和10年代の満洲や上海のような話ですね。そうやってソ連が崩壊し、社会主義は終わったと誰もが思った。だからこそアメリカの資本主義や政治をコピーすれば、日本も100年は安泰と一時的にも信じられてしまった。そこに大きな間違いがあったと思いますが、とにかく平成史の肝はソ連崩壊ですよね。

佐藤:同感です。平成史は歴史総合なんですよ。その意味では世界史としての日本史であると同時に、日本史としての世界史でもある。たとえば、平成元年に消費税が導入されますが、実は別の意味があるんです。付加価値税に反対の立場をとる世界に例のない日本独自の社会民主主義が存在している。そもそも付加価値税、つまり消費税は、社会民主主義者の専売特許だったはず。消費税導入によって、日本の社会民主主義の矛盾が露わになりました。

※SAPIO2017年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン