〈ライス販売停止〉が思わぬ騒動に(写真/イメージマート)
2025年も何かとネットを中心に炎上騒動が起こった。中には「不毛」と思えるものも多かった。「大人力」で知られるコラムニスト・石原壮一郎氏が「2025年・不毛な炎上案件トップ3」を独断で選んだ。それらは私たちに何を教えてくれるか。石原氏が解説する。
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2025年も押し迫ってまいりました。みなさんにとって、どんな一年だったでしょうか。今年もネットの世界では、毎日のように「炎上」が発生しました。有名人や大企業が燃えることもあれば、一般人の何気ない発言や行動が燃えることもあります。
傍観者にとって大半の炎上案件に共通しているのが、しばらくすると「なんであんなに燃えたんだっけ?」とコトの経緯を思い出せなくなること。覚えていても「ま、どうでもいいや」という気持ちになります。正義感にかられて対象を激しく攻撃していた人は、炎上が収まったあとも怒りを持続させてらっしゃるんでしょうか。
女性総理が誕生したり、コメ騒動が起きたり、大阪・関西万博が盛り上がったり、大リーグで大谷翔平や山本由伸が大活躍したり、クマが街にたくさん出没したりなど、2025年もいろんなことがありました。この一年をしみじみ締めくくるべく、今年を代表する「不毛な炎上案件」を振り返ってみましょう。いちおう金銀銅にしてみました。
ほっかほっか亭、コスプレイヤー、男性アイドルが表彰台に!
銅賞「ほっかほっか亭がエイプリルフールに〈ライス販売停止〉と投稿」
4月1日、大手弁当チェーン・ほっかほっか亭の公式Xが「本日より全国のほっかほっか亭 全店舗にてライスの販売を停止します。誠に申し訳ございません。#エイプリルフール」と、店員が頭を下げているイラストを付けて投稿。ハッシュタグでエイプリールフールのネタであることを示していたものの、その頃は米不足や米価格の高騰が話題になっていたこともあって、「不謹慎」「事実だと誤認される」と激しい批判を受けました。
たしかに「いまいち面白くないネタ」かもしれませんが、担当者だって一生懸命に考えたんですから、軽く鼻で笑えばいいだけの話です。「ほっかほっか亭」に怒りをぶつけたところで、世の中にとってもぶつけた側にとってもプラスになることは何もありません。燃やした方々も燃やされたほっかほっか亭も、たいへんお疲れさまでした。
銀賞「コスプレイヤーが大阪・関西万博に漫画キャラのコスプレで訪問」
4月22日、人気コスプレイヤーの鹿乃つの氏が漫画『ダンジョン飯』の登場人物・マルシルのコスプレで、大阪・関西万博を訪問。翌日、その様子をXに投稿したところ、「万博はコスプレ会場ではない」「作品に迷惑だ」といった批判が殺到します。批判してきた相手に対して鹿乃氏が自分の考えを述べると、攻撃はますますエスカレート。個人情報を特定しようとする輩も現われます。
どうやら「コスプレ関係者」の一部からは、暗黙の掟を破ったという見方をされてしまったようですが、門外漢から見ると彼女がなぜそんなに怒られているのかさっぱりわかりません。ノンキな見方ですけど、万博のいい宣伝になったし、コスプレの楽しさや魅力を広く伝える効果もあったのではないでしょうか。あ、そう考えるとけっして「不毛」とは言えませんね。いや、炎上で多くの怒りのエネルギーが費やされたり、当事者はそれを理不尽に向けられて苦しんだりしたわけなので、やっぱり不毛かな。
金賞「男性アイドルがテレビで『おじいさんにトドメ~』の替え歌を披露」
11月18日放送の「めざましテレビ」(フジテレビ系)のエンディングで、timelesz・篠塚大輝が童謡「大きな古時計」の替え歌で「今は もう 動かない おじいさんにトドメ~」というギャグを披露。たちまちネット上で「不謹慎」「高齢者に失礼」「謝罪しろ」といった批判の渦が巻き起こりました。
そりゃ、お行儀のよくない替え歌であるのは確かです。しかし、目くじら立てて怒るほどのことでしょうか。もともとはお笑い芸人の持ちネタとのことですが、笑いと不謹慎は紙一重です。批判するための理屈はいくらでも付けられますけど、常に鵜の目鷹の目で「何かに怒りをぶつけたい」という欲求を満たすネタを探しているほうが、世の中を息苦しくする迷惑な行為だと言えるでしょう。じつに不毛でトホホな炎上でした。
