その関心ネタの一つが食事だ。収監初日の朝食は食パンにチーズとケチャップという質素なもので価格は1440ウォン(約140円)だったとか(未決の拘置所段階だから自前で間食の購入はできるが)。独房なので独りで食べて、規則に従い食器は自分で洗って戻したという。
韓国は伝統的に「メシ食ったか?」の言葉があいさつ代わりの国だから食事は何よりも重要。そこで朴槿恵を「独りで食べるわずか140円の臭いメシ」で伝えることによって、その惨めさはいっそう印象的になる。
ただ朴槿恵のために弁明すれば、彼女は「独りメシ(韓国語でホンバップという)」には慣れている。
大統領在任中もそうだったが、公式行事の食事や公務中の会食以外は大統領官邸での「独りメシ」が習慣になっていたからだ。問題の40年来の悪友・崔順実がやってきても食事を共にすることはなかったという。
ただ政治家にとっては食事は仕事の延長である。いつも誰かと食を共にしながら“政治”をやるものだが、彼女はそれがなかったため「不通(プルトン)」「孤独な女王」と悪口を言われ続けた。
韓国人は人脈に生きる人たちだ。食事でも酒でもお茶でも、そして寝る時も、何をするにも連れ立ってやる。独りでは何もできない“さびしがり屋”だ。そのため、逆に独りメシは白い目で見られた。人との折り合いが悪い、性格に問題がある“欠陥人間”というわけだ。