檀家制度は江戸時代につくられた住民統治のための制度で、宗教的意味はない。制度上は明治4年の戸籍制度で崩壊したが、明治民法による家制度の法制化で、むしろ強固になった。祭祀(神や先祖を祀ること)相続と財産相続をセットにした家督相続(長男子の単独相続)が規定されたからだ。墓は、天皇制の根幹を支える「家」を強固にするためのシンボルになった。
戦後の新民法で家制度はなくなり、きょうだい平等になったにもかかわらず、人々の「ご先祖様意識」が変わらないのをいいことに、寺があぐらをかいてきた。結果、檀家制度が残り火を灯し、いまだに「長男が墓を継ぐ」が当然のよう。それは習俗習慣で、法的根拠は何もない…。
「戦後教育を受けた世代がものを言うようになって、やっと『女性がなぜ婚家の墓に入らないといけないのか』と問題意識が出てきたのが、安穏廟を造り始めた1989年頃でしょうか。以後、安穏廟も家制度への問題意識を携えて28年間歩んできました」
実は、私は一連のお墓の取材で「後継ぎ」という言葉を耳にするたび、むずむずしていたのだが、図らずも小川住職の話を聞いて、むずむずの正体がわかった。家族の概念も形態も多様化している時代に、お墓だって変容するのは当然だ。今回紹介したタイプの永代供養墓は、今後ますますその必要度が高まるに違いない。
※女性セブン2017年6月1日号