労働政策研究・研修機構が全国の勤務医3528人に行なった調査(2011年)では、厚労省が過労死ラインとして定める月80時間以上の時間外労働をした医師の2割以上が、「医療事故につながりかねない体験をした」と回答している。
そうした調査結果からも、医師にオーバーワークを強いる「ブラック病院」ほど、医療ミスが発生するリスクが高いことがわかる。全国医師ユニオン代表である植山直人医師がこう指摘する。
「アメリカやEU諸国では過重労働と医療ミスの関係性が認められて、医師の長時間労働が規制されています。しかし日本の医療界には“医は仁術”“医師は聖職”という風潮がいまだに残っているからか、長時間労働が常態化している。当直時には30時間を超える連続勤務もある」
医師個人の力量ではいかんともしがたい医療環境の構造的な問題であるという指摘だ。
※週刊ポスト2017年6月2日号