◆検査に3、4年かかる
本誌はクルーザーの建造費用がさらに高騰しかねないという新情報を得た。船舶関係者の話である。
「クルーザーはベネッティの子会社ルースベンが建造準備中だが、現在の予算では厳しい。というのも、都の仕様書では船体は鋼鉄製だが、重すぎて喫水が予定の1.2メートルより深くなることがわかった。そこで都は船体を軽いアルミ製に変えるという大幅な仕様変更を求めている。アルミ船は鋼鉄船より費用が高い。都はベネッティが同じ予算でやってくれると考えているようだが甘すぎる。予算オーバーの請求書を突きつけられる可能性がある」
船体が鋼鉄からアルミになれば溶接方法など工法の変更も必要になる。「費用の交渉がまとまらないため、建造が進んでいない」(同前)という。
海事手続きを専門にするベテランの海事代理士は、「五輪には間に合わない」と納期を心配する。
「日本の船舶検査は海外のメーカーが驚くほど厳しい。船体や艤装、装備品のひとつまで船舶安全法で細かい基準が定められている。私の経験では、ある旅客船の乗客用椅子をイタリア製の布張り椅子に取り替えただけで、運輸局から『この布は不燃か難燃か』とチェックが入った。そこでイタリアの民間検査機関の検査結果を提出すると『政府機関のデータでなければダメだ』と却下され、わざわざ日本の消防庁の関連機関に椅子を持ち込んで燃焼実験を行ない、そのデータを提出してようやくパスした」