森氏は受賞会見で、「取材をしていくなかで、自分が予想していたのと違う話がどんどん出てくる。驚きの連続だった」と取材・執筆過程を振り返った。
森氏の取材では、小倉氏が福祉事業に傾倒した背景に、家族関係に絡んだ“極めて個人的な動機”が存在したことが明らかにされていく。名経営者としてのイメージとは大きく異なる“人間・小倉昌男”の姿が、温かい筆致で描き出される。
後藤氏は会見で、同作のなかで印象に残ったフレーズとして、ラスト近くにある〈どんな家にも問題はある〉という一文を挙げた。その上で、「何か問題を背負いながら歩いて行くのが人生だと思う。(受賞作は)普遍性を持った話。感銘を受けながら読了した」と評した。
さらに『小倉昌男 祈りと経営』は、5月25日に発表されたビジネス書大賞2017で審査員特別賞を受賞。2015年に受賞している第22回小学館ノンフィクション大賞と合わせてトリプル受賞となり、注目を集めている。
※週刊ポスト2017年6月2日号