これは『半沢直樹』で歌舞伎の片岡愛之助、ミュージカルの石丸幹二、『下町ロケット』で東国原英夫、春風亭昇太を敵方に配置した構図を踏襲している。
第二のポイントは、ますますヒートアップしていく捜査一課長小野田(香川照之)の歌舞伎調の演技だ。『半沢直樹』では、主人公の一番の大敵として最後の最後に追い詰められ、土下座する場面で、ぐ、ぐ、ぐぐぐとたっぷり芝居を見せた香川。『小さな巨人』では、アップになるたびに見得の如く、にらみをきかせ、腹の底から「謝ってすむ問題ではなぁい!!」などと大音声を発する。まるで歌舞伎の迫力。はいてないのに袴をはいているように見える。
第三のポイントは、ハードルがどんどん高くなる決めセリフ。『半沢直樹』では、ご存知、「やられたらやり返す。倍返しだ!!」が流行語にもなり、TBSでは、おまけステッカー入りの『倍返し饅頭』まで発売された。一方、『小さな巨人』では、当初「100%、クロだ」「99%を100%にしてみせる」など、100%の完璧を目指していたように見えたが、第七話では、小野田が香坂に「200%の覚悟」を要求。
受けた香坂も眉間にしわを寄せて「その覚悟、必ず持って参ります」と宣言。続く八話では、小野田は「横沢は300%、クロだ」などと言い出し、香坂を追い詰めるらしい。名曲『君は1000パーセント』もびっくりのこの倍々圧力。この調子で最終回までにいったい何%が出てくるのか。銀行マンの「半沢」のように具体的な金額で勝負が決するのと違い、「200%の覚悟」は視聴者には見えない。
刑事のカンのみを根拠にどう覚悟と確信を画面に示すのか。ここが踏ん張りどころ。長谷川博己の眉間のしわは、当分、もとに戻りそうにない。