宝暦10(1760)年、徳川家治が江戸幕府第10代将軍に就いた年に創業。将軍の前で鶴の血を1滴も見せず、骨と身に切り分ける包丁技を「御鷹匠仕事」といい、幕府に仕えていた山田鐵右衞門が軍鶏料理店を開いたのが始まりだ。
東京・人形町の「玉ひで」といえば、明治時代に考案された「親子丼」が有名。だが、江戸時代から親しまれてきた「鳥すき(軍鶏鍋)」こそ食してほしい。軍鶏肉は熟成させると更に旨味が増すといわれる。引き締まった肉は、醤油と味醂のみで作られた秘伝の割り下に良く絡み、日本酒がほしくなる。
池波正太郎の『鬼平犯科帳』でお馴染みの軍鶏料理屋「五鉄」にちなんだ名物「五鉄コース」は、軍鶏のすき焼きのほか、名物の親子丼、鳥料理など4品にプリンがつく。鶏皮を最初に入れ、薄くスライスされた胸肉、もも肉、つくねと具を入れると、甘辛い香りが部屋中に立ち込める。
「時代により味の嗜好は変わっていくものなので、少しずつ割り下を変化させています」と8代目・山田耕之亮氏。250年以上続く伝統を守りながらも常に進化する味を求め、今日も人々は行列をつくる。
【玉ひで】
住所:東京都中央区日本橋人形町1-17-10
営業時間:[昼]親子丼11時半~13時、コース料理11時半~14時(13時受付終了)[夜]平日17~22時(21時LO)、土・日曜・祝日16~21時(20時LO)
休日:年末年始、夏季に臨時休業あり
撮影■岩本朗 取材・文■戸田梨恵
※週刊ポスト2017年6月23日号