国内

作家・赤川次郎氏が朝日新聞への投書で声を振り絞る意味

30年前に出版された赤川次郎さんの対談集

 6月15日の朝日新聞投書欄に掲載された小説家・赤川次郎氏の投稿がネットで話題になった。「共謀罪」成立を憂い、安倍政権を厳しく批判する内容に、赤川氏がこれまで書いてきたユーモアミステリーの作風とのギャップに驚いた読者も多いようだ。フリーライター・神田憲行氏が語る。

 * * *
 赤川次郎さんの投書は《「共謀罪」再び日本孤立の道か》と題する500字程度の短いもので、表記は〈作家 赤川次郎 東京都 69〉、紙面のレイアウトも一般の読者と同じ扱いだ。

 この中で赤川さんはユダヤ人の楽団員を追放したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の過去と向き合う姿勢と比較して、「教育勅語」を再評価し、さらに「共謀罪」を成立させようとする日本を、

《法案に賛成の議員は、自分が後の世代に災いをもたらそうとしているしていることを自覚しているのか。目先の目的のため憲法を投げ捨てて恥じない安倍政治は、日本を再び世界から孤立させるだろう》

 と厳しく批判している。最後の、

《安倍さん、あなたが「改憲」を口にするのは100年早い》

 はかなりキツイ表現だ。

 ネットでは赤川さんの論調に驚いた人も多かったようだが、赤川さんが新聞に投書するのはこれが初めてではないし、そもそも、赤川さんは昔から社会問題に関心が深い。

 今からちょうど30年前の1987年に、岩波書店から赤川さんの初めての対談集「同時代を語る-11人のカルチュア対談-」が出版されている。このなかで国際政治学者の故・坂本義和氏らとともに、私の師匠であるジャーナリストの故・黒田清も対談している。対談は黒田が前職の読売新聞大阪本社の編集局次長時代に行われ、本の出版は黒田が読売を辞めてからである。私は黒田が会社を辞めて自分の事務所を立ち上げたときからの弟子である。

 それまで黒田は赤川さんと面識がなく、突然、出版社経由で「黒田さんと戦争と平和について語りたい」と対談を申し込まれて面食らったそうだ。だが送られてきた本を私に示しながら、

「すごく考えが深い人やった」

 と回想していたのを覚えている。

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