スポーツ

高校野球 地方大会は甲子園の「予選」なんかじゃない

今年もスコアブックに夏の陽射しが当たる

 7月8日土曜日から、第99回全国高校野球選手権の地方大会が本格的にスタートした。今年の注目選手は清宮幸太郎選手(早稲田実業)といわれるが、甲子園取材歴24年のフリーライター・神田憲行氏は「高校野球の魅力はスター選手だけじゃない」という。

 * * *
 ある年の神奈川大会を球場で観戦していたときのことだ。お目当ての試合の前の試合をたまたま見ていた。コールドゲームで、しかも5回で終わっていたと思う。試合終了の挨拶をしたあと、負けた高校の選手が泣き崩れた。応援団席前に挨拶に行こうとしても、泣き崩れて立ち上がれなくなるほどになっている選手もいた。

 悪いけど、そんな泣くか?と思った。大差で全然惜しくない試合じゃん。

 選手の挨拶が終わった後、応援団、といっても丸刈りの小太りの生徒ひとりだけだったと思うが、くるっと観客席に向かって叫んだ。

「みなさん、応援ありがとうございました! 僕たちはこの学校が大好きでした!」

 えっどういうこと?と思いネットでその学校のことを調べてわかった。その年で閉校が決まっていたのだ。

 野球部の3年生だけでなく、学校にとっても「最後の夏」だったんだな。だからなんとか1勝でも、少しでも良い試合をしたかったのだな。それが9回まで試合を続けることができず、その悔しさがあの選手たちの涙につながったのだろう。

 地方大会のことを夏の甲子園を前提にして「予選」という人がいる。私はそのような呼び方をしない。「予選」というと、なにか甲子園に出場することのみに価値があるように見えてしまう。

 だが地方大会には、1勝をあげることを目標にして出てくるチームもあれば、1点を取ること、あるいは出場そのものを目標にしている高校もある。地方大会も目指すべき、れっきとした大会なのである。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン