北朝鮮や領土問題で対立する中国から国民の生命と財産を守るため、自衛隊の予算のどの部分を重点的に増加させるべきか。ミサイル防衛なのか、敵基地攻撃能力なのか、あるいは既存部隊の人員増や運用能力の強化を優先すべきなのかといった、リアルな思考が必要なのです。
しかし憲法改正に慎重な人々は憲法に自衛隊を書きこまないことや、書いたとしても軍隊でないものとして扱うことを求めます。そこにあるのは、自衛隊を「日陰者」の地位にとどめておけば、旧日本軍のように暴走しないから安泰であるとの価値観です。
平和憲法のもと、自衛隊は与野党双方からいじめられてきました。自民党でさえ、実は戦後日本的なハト派の価値観で自衛隊を冷遇してきたのです。憲法9条を奉るだけで、米国への依存も自主防衛も嫌がり、自衛隊は押し込めておくけれど、隊員には粛々と汗をかき、いざという時には血も流せというのは理不尽なご都合主義です。野党や一部の国民から圧迫を受ける自衛隊からすれば、たとえ“DV夫”だとしても自民党にすがるしかなかった。こうした不健全な依存構造は、3項追加の安倍試案では解けません。
◆自衛隊を「軍」と明記すべき
現在は自衛隊が「軍」ではないので防衛省は一般の省庁と同じ扱いです。軍事面は“素人”である財務省に人件費を大幅にカットされ、隊員は人員不足のなか不眠不休で国防任務にあたっています。また憲法上、空母を持てないという解釈になっているので、わざわざ不必要な装備を搭載して“ヘリ空母”を護衛艦だと強弁してみたりとムダも多い。これまで真剣な安全保障論議を避けてきたので、政治家はどこに予算を投じるべきかわかっていません。