国際情報

上海発の飛行機を大幅に遅らせた80歳の老婆の「儀式」

エンジンは繊細だった(写真:アフロ)

 最新鋭の装備を誇る現代の飛行機も、乗客の些細な行動ひとつで大きな影響を受ける。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 かつて中国で空の移動をすれば、遅延は常態であった。空港に到着しチェックインを済ませても待てど暮らせど登場の案内はなく、挙句の果てに欠航になるなんてトラブルは当たり前であった。

 経済発展の進んだ現在の中国では、いま、そうしたトラブルは目に見えて減少したといえるだろう。なかでも主要都市間を発着する航空便には安定感が備わりつつある。

 だが、そんななか久しぶりに中国の奥深さを思わせる航空トラブルがメディアを賑わせたのだった。

 6月27日に予定していた12時40分の浦東(上海)発、広州行きの便が、乗客による航空機の安全運航を脅かす行為により出発が大幅に遅れてしまったのである。安全運航を阻害する行為などと聞けば、真っ先にテロが想起されるが、今回の問題はそうではなかった。北京のメディア関係者が語る。

「事件を引き起こしたのは邱さんという80歳の老婆でした。彼女が飛行機に乗り込む際にエンジン目がけて持っていた硬貨を投げたのです。これは飛行機が安全に飛ぶための彼女なりの儀式だったのですが、航空会社にとっては迷惑な行為でした。とくに投げた9枚の硬貨のうち1枚がエンジンの中に入ってしまい、それを取り出すまで出発できなくなってしまったのですから」

 中国にはいまだ民間宗教の影響が強く、科学よりも迷信や言い伝えを重んじる人々が少なくない。

「人々の所得が上がり、これまで空の移動とは無縁であった人々も飛行機が身近になる時代となり、こうした予期せぬトラブルは今後も起きるかもしれませんね」(同前)

 ほんの1年ほど前には、自分の座る椅子を自ら持ち込もうとしてトラブルになったケースもあった。やはり中国は広いのだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト