ビジネス

残業代ゼロ法案が現実味 働き過ぎの貧困層が増える恐れも

サービス残業を助長する高度プロフェッショナル制度

 アナリストやコンサルタント、研究開発者などの専門職に就き、かつ年収が1075万円以上の人に限り労働時間の規制対象から外す「高度プロフェッショナル制度」が一気に法律化(労働基準法改正案)されようとしている。

 そもそもこの制度は第一次安倍政権下で立案された「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE=脱時間給制度)」を具現化するために練られてきた。表向きの狙いは、働き手の裁量を増やし、企業の生産性を高める──というものだ。

 だが、労働時間規制を除外するということは、該当する労働者は際限なく働かされる恐れがあるばかりか、企業側にとっては残業代を支払わなくてもよいことになる。それが“残業代ゼロ法案”として大きな批判を招いてきた。そのため、2015年4月に国会に出されるも、審議さえされないまま廃案状態になっていた。

 それが、ここにきて反対の急先鋒だった連合が条件付きの修正案を安倍首相に持ち掛け、制度の導入を事実上容認する構えを見せたため、亡霊のように蘇り、再び今秋の臨時国会に出される見込みとなったのだ。

 労働者の味方ともいえる連合の妥協案に首を捻るのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏である。

「連合は働き過ぎ防止策として、年104日以上の休日取得を義務づけ、それ以外に〈労働時間の上限設定〉〈退社から出社までに休息を設ける勤務間インターバル〉〈2週間連続休暇の確保〉〈心身の状況をチェックする臨時健康診断〉のいずれかを企業が選択する修正案を政府に求めています。

 でも、年104日は週休2日レベルで特に多いわけではありませんし、労働時間の上限にしようとしている年720時間は休日労働を含んでいないため、それも併せると計算上は960時間働かせることも可能です。そもそも企業が自由に選択できる項目ならば、連続休暇の確保や健康診断などを選べばいいだけで、何らこれまでの案と変わりません」(溝上氏)

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン