国際情報

北朝鮮がICBMを完成させても米国が「忍耐」を続ける理由

米国に余裕を誇示する北朝鮮の意図は?

 北朝鮮が7月4日、アメリカ本土も射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表したことで、北朝鮮はついに「レッドライン」を越えたという見方がある。いよいよトランプ大統領の堪忍袋の緒も切れて、軍事衝突に発展してしまうのか。朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。

 * * *
 マティス米国務長官は7月6日の記者会見で、北朝鮮はレッドラインを越えたのではとの質問に、「レッドラインは引かない」と述べている。この発言は、「レッドライン」を引くに引けないアメリカが置かれた現実を如実に示している。

 アメリカが北朝鮮を攻撃する場合、700か所にのぼる軍事施設が目標となるという見方がある。この数字が正しいとすれば、攻撃に使用される巡航ミサイル「トマホーク」は膨大な数となる。

 2017年4月6日に実行されたシリア攻撃では、1か所の空軍基地(シャイラト空軍基地)を使用不能にするために59発ものトマホークで攻撃している。このように、ひとつの目標に対してトマホーク1発というわけにはいかない。

 アメリカ軍は北朝鮮軍の反撃を阻止するため、第一波の攻撃(最初の一撃)で、弾道ミサイル基地、長射程砲陣地、航空基地など、北朝鮮軍が保有する全ての反撃手段を破壊する必要がある。

 したがって、アメリカは海軍が保有している約3000発ともいわれるトマホークをすべて投入する必要がある。もちろん、空軍が保有する巡航ミサイルや、戦略爆撃機、ステルス戦闘機、無人機などによる攻撃も行われるだろうが、緒戦の攻撃の主力はトマホークとなるだろう。

 アメリカ海軍が保有するすべてのトマホークを投入するためには、大西洋や中東、地中海など他の海域に配備されているトマホークを搭載した水上艦と潜水艦を、トマホークの射程距離である3000km以内の海域に移動させる必要がある。しかし、本来の担当海域に戦力の空白が生ずることを考慮すると、投入可能なトマホークの数にも限度があるだろう。

 仮にすべてのトマホークを投入できたとしても、トマホークは移動する目標には使用できない。このため、移動式発射機(輸送起立発射機:TEL)に搭載された弾道ミサイルなどは生き残ることになり、これらが日本や韓国に向けて発射されることになる。

 アメリカ軍は大規模かつ完璧な奇襲攻撃を成功させる必要がある。このためアメリカ軍は行動を完全に秘匿しなければならない。したがって、アメリカ政府がマスコミへ事前に攻撃計画を公表することはない。もし、アメリカ軍の主要艦艇や航空機の動向や攻撃計画がマスコミにスクープされてしまったら、計画を変更せざるを得なくなるだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン