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北朝鮮がICBMを完成させても米国が「忍耐」を続ける理由

◆ミサイル防衛の信頼性

 海上自衛隊のイージス艦に搭載されている弾道ミサイル迎撃用ミサイルであるSM-3や、地上に配備されている航空自衛隊のPAC-3は、かなり高い精度で北朝鮮の弾道ミサイルを破壊することが可能である。

 しかし、低い高度を飛行するディプレスト軌道で発射された場合や、一度に大量のミサイルを発射する飽和攻撃に対応できない可能性があるなど、北朝鮮側がミサイル防衛の盲点を突いてきた場合は対応できない可能性がある。

 SM-3に関しては、海上自衛隊のイージス艦に搭載されているSM-3の数は防衛秘密となっているが、アメリカ海軍が1隻あたり8発を搭載しているため、海自も同様であると思われる。

 海自は6隻のイージス艦を保有しているが、そのうちの4隻にSM-3が搭載されている。このため、(現実には4隻全てを常時即応体制にすることは困難だが)単純計算で4隻合わせて32発となる。

 このように発射可能なSM-3が限定されているため、破壊できなかった弾道ミサイルは空自のPAC-3で対処することになる。しかし、PAC-3で迎撃可能な範囲は数十キロであるうえ配備数も多くはない。このため、防衛できるのは大都市や重要施設に限定される。

 もちろん有事となれば、アメリカ海軍のイージス艦も対応することになるため、発射可能なSM-3の数は32発以上となるだろう。しかし、SM-3やPAC-3の数や能力とは別に、次のような問題がある。

◆アメリカが攻撃できない理由

 筆者は将来にわたりアメリカは北朝鮮を攻撃できないと考えている。アメリカが北朝鮮を攻撃する場合、北朝鮮軍が反撃(報復攻撃)として日本や韓国を攻撃しないという確証を得る必要があるためである。

 しかし、このような確証を得ることは困難であるため、限定された目標をピンポイント攻撃する「サージカル・ストライク」を含む、攻撃の規模にかかわらず、次の3つの条件が揃うことが必要になる。

(1)日本の領土がミサイルなどによる攻撃を受けることを日本の総理大臣が容認する。
(2)韓国の領土がミサイル、長射程砲、多連装ロケットなどによる攻撃を受けることを韓国の大統領が容認する。
(3)アメリカ軍の攻撃により金正恩体制が崩壊した後の新体制について、アメリカと中国の間で合意が成立している。

(3)については、中国はアメリカ軍との緩衝地帯としての朝鮮半島の北半分の地域を必要としているためである。また、韓国主導による「統一朝鮮」の誕生は、経済格差の大きさなどから現実的ではない。統一するとしても、かなりの年月と費用を「統一準備」に費やす必要がある。

 日本の総理大臣には、ミサイル防衛の限界など、様々な状況を考慮したうえでの判断が求められる。最後は兵器の技術ではなく政治の判断となる。極論かもしれないが、アメリカ本土の防衛のためなら、日本国民の生命と財産が犠牲になることも厭わないという判断が求められるだろう。

 1950年に勃発した朝鮮戦争が「終戦」ではなく現在も「休戦」となっているのは、アメリカと北朝鮮、そして中国との間で、このような外交でも軍事でも解決できない問題が常に存在しているからである。

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