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北朝鮮がICBMを完成させても米国が「忍耐」を続ける理由

◆北朝鮮の弱点

 しかし、北朝鮮にも弱点はある。それは、国民統制の崩壊と治安の悪化に歯止めがかからない国内情勢である。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』の最終面は「国際面」となっており、日本を含む外国で行われたデモや抗議集会の写真が掲載されることがある。これは、いかに世界の多くの国で民衆が「虐げられ」「抑圧」されているかを報道することで、北朝鮮国民が「恵まれている」ことを国民に宣伝するためである。

 2015年9月に日本で安全保障関連法が成立したわけだが、これに関連する記事や集会の様子の写真も掲載された。日本ではSEALDsをはじめとする若者による抗議行動が話題になったが、『労働新聞』には若者が参加している写真は全く掲載されていない。

『労働新聞』には、2015年7月から9月の間に安全保障関連法に反対する集会の写真が13 回掲載されたが、若者の姿は全くなく、映っているのは中高年の人々ばかりであった。これは日本だけでなく他の国の集会やデモの写真も同様で、若者は映っていないか不鮮明な写真が使用されている。

 このような措置は、金正恩体制に不満を持つ北朝鮮の若者が、外国の若者の抗議行動に触発されることを警戒しているためであろう。

 金正恩は反体制グループの存在を認識している。治安が急速に悪化していることは、2000年以降、刑法を20回にわたり改正し、新たな犯罪の追加と厳罰化が行われていることからも裏付けられる。とくに若者の凶悪犯罪が増加していることが治安機関の懸案事項となっている。

◆「余裕」を誇示する北朝鮮

 アメリカは朝鮮戦争休戦以降、空母や戦略爆撃機を用いた軍事的圧力だけでなく、核兵器の使用を検討したこともあった。空母2隻が日本海に派遣された今年4月の「危機」は、過去の事例と比較してみると、それほど深刻な「危機」ではなかったとえる。

 トランプ政権は今後も北朝鮮に対して強硬発言を続けるかもしれないが、空母や戦略爆撃機を投入しての「圧力」の域を出ることはない。

 トランプ政権は北朝鮮に対する「戦略的忍耐の時代」は終わったとしている。しかし、南シナ海では中国と対立しているにもかかわらず、北朝鮮に関しては中国を頼りにするしかないという矛盾した現実を考慮すると、トランプ政権は「戦略的忍耐」を続けるか、北朝鮮が望む米朝直接対話へと舵を切らざるを得なくなるだろう。

 北朝鮮では昨年に引き続き、今年9月にも「元山国際航空親善フェスティバル」の開催が予定されている。北朝鮮軍の航空機も多数参加する、旧式の軍用機ファンにとってはたまらないイベントだが、金正恩が視察する軍事演習だけでも貴重なはずの航空燃料を大量に使用しているにもかかわらず、このような外国人向けのイベントの2年連続の開催は、北朝鮮の「余裕」を誇示するものであり、アメリカをあざ笑っているように思えてならない。

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