国際情報

司馬遼太郎の案内役・老台北から自虐史観の日本人への遺言

日台交流を担う人材育成に尽力し続けた 共同通信社

 一週間前に国際電話でお話しし、激励を受けたばかりだった。“愛日家”蔡焜燦(さいこんさん)氏が7月17日に台北の自宅で亡くなった。90歳だった。

 蔡焜燦氏──司馬遼太郎氏の著書『街道をゆく 台湾紀行』(朝日新聞社)で、司馬氏の案内役を務め、司馬氏との軽妙なやり取りが読者を惹きつけた。司馬氏をして「博覧強記の人」といわしめ、そして“老台北”(ラオタイペイ)として人気を博した蔡氏の死は日台両国にとって大きな損失である。

 蔡焜燦氏は、日本統治時代の昭和2年(1927年)に台湾中部の台中州(現・台中市)に生まれ、彰化商業学校を卒業した後、志願して岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊に入校する。その後、日本が敗戦して台湾に復員した蔡氏は、学校の体育教師を務めたのち実業家に転身して半導体のデザイン会社などを経営した。だが蔡氏は、こうして築いた財を日台交流のために惜しみなく投じて両国の人材育成につとめたのだった。

 蔡焜燦氏は、こよなく日本を愛し、自ら、“親日家”を超える“愛日家”と称して日台交流の中心的役割を果たしてきた。これまでどれほど多くの日本人が彼を訪ねていったことか。

 実業家でもあった蔡氏は、日本統治時代の第4代台湾総督・児玉源太郎の民生長官を務めた後藤新平の遺訓「金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生は上」を胸に刻んで、将来の日台交流を担う人士の育成に取り組んできたのだ。

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト