ライフ

【書評】鰻重が消えた世界でスターになるのは「ナマズ」か

ウナギ味のナマズ重

【書評】『 なぜ「近大発のナマズ」はウナギより美味(うま)いのか?
″新しい魚″開発の舞台裏』/山下柚実・著/光文社/1400円+税

 考えたくもないが、現実から目をそらすこともできない。絶滅危惧種に指定され、資源枯渇の危機が叫ばれているウナギ。世の中から鰻重が消えてしまった日を想像すると、恐ろしい。大の鰻重好きにとって耐えがたい。しかし、本当にそういう日が来るかもしれない…。

 土用の丑の日、鰻重の値段の高さに悲嘆するけれど、しかしまだ食べられるだけいいのかもしれない。ウナギの完全養殖の実現は今から10年はかかる、と専門家は言う。絶滅危惧種でも多くの人が「食べ続けたい」と願っているとすれば、一体どんな解決策がありうるだろうか?

「もし、ウナギの完全養殖がまだ道半ばだとすれば、可能な限りウナギに近い蒲焼きを味わうことができる道はないのだろうか。ウナギの蒲焼きのような食文化を楽しみ続けることは、どうすれば可能になるのだろう」と本書は問いかける。

 32年間という長き研究の成果として世界初のクロマグロ完全養殖を実現した近畿大学。あの「近大マグロ」を生んだ大学が、次の新たな挑戦を繰り出している。

 それが、本書のテーマである「ウナギ味のナマズ」だ。

 本書は、ナマズ改良の研究に携わり美味なる蒲焼きに仕立てあげた、有路昌彦近大教授に焦点を当て取材を重ねている。研究者が自ら網を握って湖や川に入り、さまざまな魚を捕獲し蒲焼きにして味を比較、といった泥臭いスタート。「ナマズ」に的を絞ってからのエサや飼育環境のコントロール、泥臭さを消しウナギ味に近づくよう適度な脂肪を乗せていく技術開発に6年を費やした。その試行錯誤と奮闘ぶりが実にリアルに、生々しく語られていく。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン