もともとメーカーが”高級化”に乗り出した背景には、長期化するデフレや少子高齢化などといった社会環境の変化がある。これまで通りの品ぞろえでは単価は上げられないが、青少年のおやつというだけでは先細りとなりかねない。「気軽な庶民のおやつ」だったポテトチップも環境の変化への適応を求められている。
もっともポテトチップスが「気軽な庶民のおやつ」になったのはそう古い話ではない。日本のポテトチップス史をひともくと、戦後に上陸したポテトチップスはまだ高級品だったという。1962年に湖池屋がポテトチップスを発売し、同社が量産化に成功したのが1967年。現在シェアトップを独走するカルビーがポテトチップスを発売したのは1975年のことだった。ポテトチップスが「気軽な庶民のおやつ」化してから、まだ約50年しか経っていない。
いつまでも「気軽な庶民のおやつ」だと思っていたら大間違い。原料の作柄やマーケットの動き次第で、その価値はいつでも変化する。それはポテトチップスにかぎらず、我々が口にするすべての食べ物に共通することわりなのだ。