三和に集まる人々の多くは20~30代の若者だ。彼らはどんなに貧しくてもスマホを持ち、パソコンも使える。だがそれゆえに、ネットゲーム(ネトゲ)などのデジタルな娯楽に搦め取られる者も多い。
「1日働けば3日遊べる」
これが三和の合言葉だ。路地裏には格安のネットカフェ(ネカフェ)が数十店舗も乱立し、平日の昼間から遊ぶネトゲ廃人で満員である。
深センの中心部なら1食30元(約500円)かかる食事も、三和では4~10元で済み、安旅館の寝床にもありつける。短期労働でわずかな収入を稼げば、しばらくゲームやギャンブルに興じて暮らせるのだ。
数年ほど前から、彼らは中国のネット上で「三和ゴッド(三和大神、サンホーダーシェン)」と呼ばれはじめた。ただしその生活の実態は「神様」とは程遠いものである。
◆ヴァーチャル決済の闇
「過去、1年4ヶ月くらい三和で暮らした。朝から晩までネトゲ三昧だが、最低の生活だったぜ」
元ゴッドの譚茂陽(タンマオヤン)は言う。彼は湖南省チン州市出身の23歳。中学卒業後に深センに出て工場労働者になり、やがて小さな食堂を友人と共同経営しようと考えた。だが、創業資金5万元(約83万円)のうち彼が2万元を負担した店は、たった2ヶ月で倒産した。法律がわからず、無許可で露店を出して通報されたのだ。