「腹立ち半分にやったネットカジノのバカラで、小銭が10倍に増えた。ハマってしまい、気付けば貯金がゼロになった。そこで周囲の人間や友人に6万元(約100万円)以上の借金をした。だが、ウェブ上にお金を置いていたら、いつの間にかネトゲとネットカジノで全額使ってしまった」
大手IT企業のテンセントも本社を置く深センでは、同社が提供する微信支付(ウィーチャットペイ)をはじめ、近年は日本以上に電子マネー決済が普及した。だが、それゆえに消費実感を伴わないままネット上の娯楽に散財し、破産する若者が後を絶たない。
やがて譚は生活費が破格に安い三和に移る。工場労働すらせずに、一晩過ごしても5元で済むネカフェに住み着くようになった。
廃屋のような建物の1階にある三和のネカフェは路上から吹き晒しで、シャワー設備はない。当時の譚の一日はこんな調子だ。
【朝8時】ネカフェの席で起床。昨晩「寝落ち」したネトゲにログイン。
【朝9時】店内にやって来る物売りから包子(中国パン)と豆乳を2元で買い、ネトゲをしながら朝食。
【正午】昼食は摂らずネトゲを継続。
【夜7時】出前のぶっかけ飯を8元で買い、ネトゲをしながら夕食。
【夜12時過ぎ】ネカフェの席で睡眠。1日が終了。
譚はお金がなくなると、座ったままでバイトをした。彼は有名ネトゲ『ラグナロクオンライン』で深セン某地区の最強ギルドメンバー(*)だった経験を持つ名人で、別の人のレベル上げを代行すれば「200~300元を稼げて、工場より儲かった」からだ。手元の現金がすこし増えると、再びネットカジノにつぎ込んだ。
(*オンラインゲームで、ともにプレイする仲間たち。ゲーム進行を助け合い、時にはチャットなどで会話も楽しむ)