患者さん本人が、自分の意思を残している場合はいいが、そうでない場合は忖度をしなければならない。結局、何となく空気に流されて、胃ろうを置く処置を受けることも少なくない。今、日本には胃ろうを置いている人が約40万人いるといわれている。
もちろん、胃ろうは悪いことばかりではない。食べられなくなった患者さんが、3か月後の孫の結婚式まで生きたい、などのはっきりした目標があり、本人がそうしたいと意思を表しているのなら、それでいい。
いちばんよくないのは、本人の自己決定がないまま何となく胃ろうを設置し、長期化することである。これで、本人も、家族も幸せになったのか。疑問が残る例がある。
最期をどうするかは、一人ひとり価値観が違うので、他人が忖度してもしきれない。にもかかわらず、医療では過剰な忖度が必要とされてきた。でも、そろそろこの体質から脱すべきだ。本人がきちんと意思を残し、家族に苦しい忖度をさせないようにしたい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。2017年8月23日(水)に小学館カルチャーライブ!にて講演会を開催予定(https://sho-cul.com/courses/detail/27)。
※週刊ポスト2017年9月1日号