「政府は予防システムに力を入れることで、ヘルパー派遣など費用のかかる本来の介護サービスを使わせないようにする狙いを感じる。介護保険財政が厳しいからです。特養の入所基準を引き上げたのも、カネのかかる特養を増やさないようにするためでしょう。

 しかし、比較的軽度の要介護2でも認知症の方は在宅介護が困難で、特養入所が必要なケースは少なくない。介護認定率を下げた自治体に調整金を増やすのも、高齢者に介護サービスをできるだけ使わせず、施設に入居させないという政府の意図を強く感じます」

 年金生活の高齢者にとって年金から天引きで徴収される介護保険料の負担は重い(全国平均月額1人5642円)。それなのに、いざ介護が必要になっても、要介護認定してもらえずに、介護サービスは受けられないのが現実なのだ。

「特養の入所が難しくなれば、民間の有料老人ホームなどに行く高齢者が増えるはず。ただ、費用が高いため、国民年金加入者など受給額が少ない人は払うのが難しいでしょう」(結城氏)

 ここにも「老前破産」への暗闇が広がっている。

※週刊ポスト2017年9月1日号

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