では何が起きているのか。「小規模の落語会の数が増えている」のである。そして、その小規模の会の主役がベテランや中堅ではなく若手、それも二ツ目(真打の下の身分)だったりすることが多い。
昨年、いくつかのテレビ局が「今、若い女性が渋谷で落語を聴いている」という話題を取り上げた。ここで言う「渋谷で」とは、渋谷区円山町のユーロライブ(178席)というライブスペースで開催される「渋谷らくご」(通称「シブラク」)のこと。落語初心者の若者でも気軽に足を運べる落語会、という趣旨で2014年にスタートした「シブラク」は、毎月第2金曜から5日間で10公演開催される。
「シブラク」のプログラムは若手、それも二ツ目が中心だ。予算面からの苦肉の策かもしれないが、これが功を奏した。ここの客層は従来の落語ファンとは異なり、明らかに最近聴き始めた若者、それも「シブラク」だから来る、という人が多い。ただし「女性客が多い」というのは近年の落語界では常識であって、驚くのは単に取材者の勉強不足。ここではむしろ、「二ツ目なのに客が来る」ことに驚くべきだ。
◆2005年以前とは違う…若者にもウケる時代到来
二ツ目を聴きに若者が足を運ぶのは「シブラク」だけではない。新宿末廣亭で毎週土曜の夜9時半から二ツ目が4人出演する「深夜寄席」は、ここ数年「500円で気軽に楽しめる」のが若者にウケて大入り満員の人気興行となっている。(今年1000円に値上がりした)
今マスコミが注目する「落語ブーム」とは、端的に言えば、この「二ツ目が客を呼ぶ」現象を指す。文字どおり「二ツ目ブーム」という切り口の記事も少なくない。今は二ツ目が落語だけで食べていける。昔なら考えられないことだ。