佐藤:同感です。元原子力安全委員長の佐藤一男さんは、1984年に刊行した『原子力安全の論理』で原子力産業の問題点を喝破しています。人間はコンピューターに比べて、計算も遅くて、記憶力もない。でも総合的な判断力は人間に優るものはない。だからアクシデントを防ぐには人間を鍛えるしかない、と。
片山:予見的な書ですね。東海村JCO臨界事故は、原子力産業のひずみを我々に見せつけました。3・11の12年前ですよ。歴史は必ず未来への予兆と警告を発する。受け止めが足りませんでした。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
■構成/山川徹 ■撮影/太田真三
※SAPIO2017年9月号