国際情報

中国人の反日感情 爆買いとSNSの影響で減少傾向に

実際に来てみたら違った?

 中国に関していえば、「爆買い」が取り沙汰される以前はたびたび「反日」がニュースになっていた。経済の発展、時間の経過とともに、中国の社会もまた様変わりしつつあるようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 9月1日、中国政府が企業の設立時に登記する名称について、禁止事項などを定めた新ルールを公表したことが日本で大きなニュースとなった。問題は中国が問題視する名前の中に「大和」や「大東亜」、「支那」といった言葉を挙げたことだ。中国側の説明によれば、いずれの言葉も先の戦争を想起させるということで、これが新ルールの「国や公共の利益を損なう文字を含む企業名」に相当するというのだ。

 戦争を想起させる言葉として「大東亜」は理解できるし、「支那」を差別語とすることも解る。だが、「大和」は日本人の名前に普通にあるのだから、規制する側のリサーチ不足が指摘されよう。

 それにしても中国の「反日」的パフォーマンスは相変わらずなんだなと、とため息が漏れそうになるのだが、これはちょっと違っている。

 何が違うのか。明らかなのは民間の反応である。中国共産党の立場からすれば、反日は「自らが政権を担当する正当性」にも直結する話であり、妥協の余地はない。だが、中国の人々はそうではない。そして変化はここに明白に表れている。

「それは日本を訪れ、実際に自分の目で中国を見た人が増えたことが大きい」

 と語るのは北京のメディア関係者だ。

「自分の目で見た日本は『人々が親切で差別もされない。また街は清潔で快適だった』と旅行者が帰国後に口コミやSNSで広めたのが大きい。さらに中国人が自国の経済力を実感する場面が増え、相対的に日本への興味も落ちたこともある。いずれにしても、いまではもうかつての反日感情はありません」

 それを象徴する事件が起きたのが8月23日のことだ。上海市の抗日記念館として有名な四行倉庫の前で3人の中国の若者が、わざわざ日本の軍服を着て写真を撮り、それを自慢げにSNSにアップしたのである。

 もちろん本人たちはシャレのつもりなのだろうが、それにしたって日本の軍服を身につけるというのは、数年前であれば自殺行為であり、発想するにしても強い嫌悪感を拭えなかったに違いないのだ。

 時代は変わったというほかない。

 昨年11月には瀋陽市のショッピングモールでナチス・ドイツの独裁者ヒトラーを思わせる口ひげを生やした安倍晋三首相のろう人形が展示されたことがあったが、このときはネット上で「恥ずかしい」「中国人はこんなことに心の安らぎを求めていない」と批判が噴出。主催者が慌てて撤去するという事件も起きている。

 そういう意味では今回の新ルールも反日の再現にはつながらないのだろう。

 それにしても1990年代には日本の「野尻眼鏡工業」が、「野尻」などという卑猥な名前はもんだいだとして社名変更を求められたことがあったとされたが、名前は中国でなかなか敏感のようだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
元・明石市長の泉房穂氏
財務官僚が描くシナリオで「政治家が夢を語れなくなっている」前・明石市長の泉房穂氏(62)が国政復帰して感じた“強烈な危機感”
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン