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【書評】歩く、とは何か 壮大なテーマを縱横に思索する書

【書評】『ウォークス 歩くことの精神史』/レベッカ・ソルニット・著 東辻賢治郎・訳/左右社/4500円+税

【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 歩く、とは何か。それは人に何をもたらしてきたのか。この壮大なテーマを、著者自身が歩き、体験したことも織り交ぜながら、縦横に思索する書である。

 自分の速度で歩き、風景やすれ違う人にふと目をとめる。そんなとき、まとまらずにいた考えや、ふと思いついたことがしだいに形をなしていく経験は誰にでもあるだろう。ソルニットは、その豊かさを端的に述べている。

〈歩くことの理想とは、精神と肉体と世界が対話をはじめ、三者の奏でる音が思いがけない和音を響かせるような、そういった調和の状態だ。歩くことで、わたしたちは自分の身体や世界の内にありながらも、それらに煩わされることから解放される。自らの思惟に埋没し切ることなく考えることを許される〉

 ブローニュの森をひとり散歩しながら『人間不平等起源論』を執筆したルソーの思想。原始人の身体と歩行の始まり、中世の巡礼や市民運動の行進、庭園の散策から徒歩旅行の出現。都市の遊歩者たちの肖像、自動車の時代と郊外生活者、砂漠に出現したラスベガスの歩行者天国の奇妙さ……。哲学、人類学、宗教、文学、芸術、政治や都市計画、建築まで、著者は膨大なテキストを引用しつつ、多分野の領域を大胆にまたいでいく。

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