「はァ~!」
と、目を見開いた中村は満面の笑みを浮かべ、
「オホホホホホ!」
と笑いながら男性の背中をバン、バンと2回叩いたのだった。
どうやら中村は絵柄を狙う「目押し」が苦手で、店内にいる顔見知りの客に声をかけて“代打ち”してもらっていたのである。その後も知人男性の手を借りつつ大当たりを引き、その度に笑い声がホールに響いたのだった。
換金場で現金を手にした中村が帰路についたのは夜8時過ぎ。6時間もの“勝負”を終えた足取りは軽そうではあった。
勝新太郎の没後20年、亡夫の豪快さと愛嬌は彼女に受け継がれているようだ。
※週刊ポスト2017年9月22日号