中小の機械販売会社の嘱託社員Bさん(67歳)の話はもっと身につまされる。
「定年後も会社に残ったのは顧客を持つ営業職だけ。事務職は再雇用されても倉庫など慣れない現場に回されてみんな辞めていきました。営業で土日出勤しても休日出勤手当は出ないし、売り上げが悪いと契約更新されない。63歳で東北営業所に単身赴任を命じられて辞めた同僚もいます」
なかには再雇用の際に労働時間を意図的に抑制し、厚生年金や健康保険の事業者負担分を払わないで済まそうとする「ブラック再雇用」も横行している。“保険料はすべて自腹で払え”という意味だ。
それが民間の現実だ。国家公務員と地方公務員にも60歳の定年後、「再任用」で最長65歳まで働ける制度が用意されているが、民間企業の再雇用と比べると天国と地獄ほどの違いがある。
まず給料が高い。国家公務員が再任用でフルタイム勤務した場合、月給は現役時代の7割(最高額の行政職10級は約52万円)、ボーナスも年間2.2か月分支給される。
さらに残業手当や休日出勤手当はもちろん、東京23区内勤務なら本給の20%分の地域手当が加算される。地方に単身赴任することになっても、現役時代と同じく「広域異動手当」(本給の10%増)や「単身赴任手当」(月額3万~10万円)などが支給される。再雇用に詳しい社会保険労務士の内海正人氏が指摘する。
「民間、とくに中小企業は再雇用時の手当などの労働条件が整備されていないケースがほとんどです。公務員の再任用のように各種手当がつき、仕事も現役時代より楽になり、年間2.2か月のボーナスまで保障されているのとは別世界の話です」
※週刊ポスト2017年9月22日号