そもそも私は統治機構を道州制にして、選挙制度は大選挙区制にすべきだと主張してきた。日本には市町村が1700以上もあるのだから地方行政はそれらの自治体の首長と議員に任せて、国会議員は道州レベルで選べばよいという提案だ。そうなれば、国会議員は「おらが村」の道路や橋などの話をしても始まらないので、天下国家しか論じなくなる。大選挙区制にして初めて、国会議員は国の将来や外交をどうするかといった国政レベルの議論ができると思うのだ。
その一つの理想形はドイツである。ドイツは連邦制で、16州ごとに立法・行政・司法や経済・産業政策などを決めることができ、16州を束ねる連邦政府の首相は外交、国防など国の長期的な方向だけを差配する。この制度によってシュミット、コール、シュレーダー、メルケルといった国際的にも高く評価される優れた首相が登場し、長期政権を実現している。
日本にドイツのような統治機構を導入することは、小選挙区制で選ばれた国会議員には無理なので、かつて私が主張した「新・薩長連合」のような地方の知事たちによる“革命”しかないと思う。それは東京都の小池百合子知事ら大都市の知事がタッグを組み、中央集権の打破と地方主権に本気で取り組めばできるかもしれない。その時、野党は自民党との政権争いに汲々とするのではなく、地方からの革命を支援する側に立てばよいのだ。
民進党の「政策集2016」には「道州制をめざします」と書いてある。ならば安倍一強を崩すためにも、民進党は健全野党となって「小選挙区制廃止、中選挙区制復活」の議論をぶつけて自治体の首長の一斉蜂起を助ければよいのである。前原代表には、そういう思い切った方針転換を断行してもらいたい。
※週刊ポスト2017年9月29日号