レストランでは、胸に金日成や金正日のバッジをつけ、一目で朝鮮労働党の幹部であることが分かる人民服姿の中年の男たち数人と、中国人らしい白いワイシャツ、黒いスラックス姿の男数人が一つのテーブルに座り、昼間から酒盛りをしていた。ここでは、記念館とは反対に、中朝の密接さを見せつけられた。
丹東で筆者を案内してくれた地元旅行代理店の中国人男性ガイドは「中国側は朝鮮族で、丹東市政府の幹部や職員、あるいは貿易会社の人たちです。商談でもしているのではないですか。国連の制裁といっても、同じ朝鮮族同胞ですから、あってないようなものです」と言ってのけた。
北朝鮮と隣接する遼寧、吉林、黒竜江の中国3省には朝鮮族が多く住んでおり、3省だけで中国全土の朝鮮族180万人の大半を占めている。しかも、これらの3省は経済成長率は一様に低い。
中朝関係に詳しい在瀋陽の外交筋は「とくに遼寧省は経済面のマイナスをカバーするために北朝鮮との貿易は不可欠。中国と北朝鮮は国家レベル、中央レベルでは関係は冷え切っているが、そんなことは地方レベルでは関係ないのです」と説明する。
そのうえで、同筋は「遼寧などの3省は朝鮮族を中心とする『朝鮮幇』を形成する素地がでてきており、中国と地下経済でつながっている北朝鮮という国家が存在し続ける限り、朝鮮幇の暗躍は止むことはない」と指摘する。
※SAPIO2017年10月号