ただ、なぜ逮捕当時44歳と、まだ若い馬がそれほど手広く対北ビジネスを展開できたのかという疑問は残る。馬は美人経営者として有名で、その美貌を武器に、北朝鮮の最高指導部の1人で、中国政府要人とのパイプが強い張成沢・元朝鮮労働党政治局常務委員と個人的に密接な関係があったともうわさされている。張といえば、金正日指導部内でナンバー2といわれた実力者で、金正恩指導部発足後、処刑されたことで知られる。
「馬は張の処刑後も北朝鮮との貿易を続けていることから、馬のバックには張以外にも北朝鮮の朝鮮人民軍最高幹部がついていたのではないか」と中国メディアは伝えている。同筋は「馬が地元政府幹部らを抱き込んで朝鮮幇を形成し、秘密結社的な組織を拡大していったのではないか」と指摘する。
これを裏付けるように、「丹東東源実業有限公司」も馬の会社と関わりが深く、両社で対北ビジネスを分担していたとされる。米国のシンクタンク「C4ADS」の報告書によると、丹東東源は軍用、民生のデュアルユース(二重用途)品目の北朝鮮への輸出に関わり、16年6月に79万ドル分の弾道ミサイルの誘導システムに転用できるナビゲーション装置である無線航法補助装置や、トラックなどを北朝鮮に輸出したとされる。
同社の中国人経営者の孫嗣東は昨年8月、北朝鮮から鉄鉱石や約3万発のロケット弾を積んでスエズ運河に向かい、エジプト政府に拿捕された貨物船をかつて保有した船会社の経営者でもある。