ライフ

ジャズピアニスト・山下洋輔が語る西郷隆盛との奇縁

祖父設計の旧奈良監獄で演奏する山下氏 共同通信社

 ジャズピアニスト・山下洋輔氏は30年ほど前、自身のルーツを辿る中で、先祖と西郷隆盛との浅からぬ縁を知った。山下氏が100年以上の時を超えて邂逅した英雄・西郷隆盛を語る。

 * * *
 西郷さんがいなければ、ぼくはこの世に存在しなかったかもしれない。鹿児島城下の西田町に生まれたぼくの曽祖父・山下龍右衛門房親は、生家が近かった14歳年上の西郷さんに可愛がられていた。

 戊辰戦争時、曽祖父が小隊長として参戦した庄内攻めの戦場には、「元気でやっているか。いずれ庄内では一緒に戦って功を争おう」という西郷さんからの手紙が届いた。新政府の重鎮である西郷さんが一小隊長を激励するのは極めて異例のこと。羨ましがった仲間が手紙を欲しがると、曽祖父は「自分が死んだら取ってよい」と言い、手紙を身体に巻きつけて戦った。

 西郷さんが着陣し、やがて庄内藩が降伏すると、「これだけの兵で庄内の米を食い潰しては気の毒だ」と言い、薩摩軍の一日も早い撤兵を促した。敗残兵からの攻撃を怖れた曽祖父が「撤兵は得策ではない」と抗弁すると西郷さんは笑顔で言った。

「武士が兜を脱いで降伏した以上は信じるべきだろう。また起きたらまた討てばいいではないか」

 いかにも西郷さんらしい器の大きな言葉ではないか。戊辰戦争後、西郷さんは曽祖父の行く末を案じ、「廃藩置県をやった後上京できるよう準備をしておけ」との手紙を宛てた。曽祖父は西郷さんの計らいで明治4年に上京。後に「日本警察の父」と呼ばれる川路利良のもとで近代警察組織の設立にたずさわる。明治9年にはぼくの祖父・啓次郎を東京に呼び寄せた(祖父は長じて建築家となり「明治の五大監獄」を手がけた)。

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン