阿川佐和子が最初にあげたのは日本に帰化したウィリアム・メレル・ヴォーリズである。日露戦争の年に来日、英語教師から建築家に転じたヴォーリズは、東洋英和、神戸女学院、山の上ホテルなど、記憶に残る多くの建物をつくった。それは、建築家の自己主張を旨とする現代建築とは正反対、上品かつ懐かしい「昭和のたたずまい」そのものである。
半藤一利はほかに、「謹慎小屋」で後半生を過ごした今村均元陸軍大将、編集者時代に濃密なつきあいを持った松本清張、父親・半藤末松について語った。阿川佐和子は、植木等、クロネコヤマトの小倉昌男、最後に作家の父・阿川弘之を話題にしたが、「昭和」の栄光と明朗さ、波乱と惨状と救いをもたらしたのは、みな明治人・大正人であった。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号