だが、順風満帆であっても勝山の視線はその先にあった。ワインを自ら輸入したいという思いが芽生え、ワインの輸入会社に転職。さらに、自分が輸入したワインを自分の店で客に楽しんでもらいたいと思うようになった。こうして1993年に生まれたのが「祥瑞」だった。
「当時はボルドーやブルゴーニュのワインが人気の主流でしたが、私はフランス南西部のロワールや南部のローヌなど、マイナーなエリアのワインを中心に揃えたかった。加えて意識したのは、『造り手の顔が見えるワイン』。ワイン造りの根幹をなす生産者を大切にしたかったんです」(勝山氏)
「祥瑞」には世界を目指す若きソムリエたちが夜ごと集まり、店内のワイン棚を覗き込んだ。そこはまさにワイン界の梁山泊だった。
さらに1998年には、東京・銀座に赤ワインと短角牛の赤身肉ステーキを組み合わせたレストラン「グレープ・ガンボ」をオープンする。その後惜しまれつつも閉店することになるが、ワイン同様、料理の味も評判を呼び、「美味いものは勝山に聞け」と喧伝されるようになった。
しかし、勝山の真骨頂はやはりワインだ。知る人ぞ知るのが、近年人気の「ナチュラルワイン」をいち早く広めたことである。
フランス語で「ヴァン・ナチュール」と呼ばれるこのワインは、文字通りできるだけ自然の状態で造り出す。一般的に、ワインは味や香りをコントロールするために酸化防止剤や砂糖などを加えるが、ナチュラルワインはそうしたものを極力使わない。