日本補聴器工業会の試算では、国内の推定難聴者数は約1994万人で、人口の15.2%に達する。深刻なのは、聴覚の異変は初期の自覚症状が少なく、「空耳だろう」と放置して悪化するケースも多いことだ。そうした「隠れ難聴」が多く存在するからこそ、“気がついたら認知症”というケースが出てくるのだ。山中医師が続ける。
「中高年の耳の異変は本人ではなく、家族が気づくケースが多い。妻や子供からテレビの音量が大きすぎるといわれたり、“聞き間違いや聞き返すことが増えた”と言われたら危機意識を持つべきです。鼓膜や外耳などに障害が生じて音が内耳まで伝わらない『伝音難聴』の疑いがあります」
そうした伝音難聴は、高齢者の場合「耳垢」が原因であることが多い。
「『耳が急に聞こえにくくなった』という高齢者でかなりの頻度で見られるのが、たまった耳垢が耳を塞ぐ『耳垢栓塞』のケースです。耳垢を取り除くとすぐに聴力が回復しますが、放置すると伝音難聴が悪化するので要注意です」(山中医師)
些細な聞き間違いを“単なる空耳”と思って放置すると、どんどん耳が聞こえなくなるかもしれないのだ。
※週刊ポスト2017年10月27日号